着衣着火と表面フラッシュ現象に注意

生活


表面フラッシュ現象(別名フラッシュスプレッド現象)とは、コンロなどで火をつけたときに衣服に炎が一瞬で燃え広がる現象のことです。

綿やレーヨンなどの素材でゆとりがあったり毛羽立ったりしている服で起こりやすく、燃え広がる時は一瞬で腕から肩まで走るように広がるため大変危険な現象です。

表面フラッシュ現象の恐ろしいところは、火花のような軽い火種でも一瞬で燃え広がることがあることです。また、薄く燃え広がるため透明な炎があがることが多く、着衣の上なので熱さを瞬間的に感じることは少ないことが被害を大きくしてしまいます。一度起こると対処が難しいため、予防が大切になります。

このページでわかること

着衣着火しやすい服、海外での着衣着火に関する法律、参考になる論文、燃え広がりやすい部位、もし服に火が付いたらどうするか

燃えやすい衣服はゆとりのある服

火は酸素と可燃物、着火源があることで発生します。簡単に言いますと、空気がたくさん含まれているものはよく燃えます。そのため、燃えやすい服と燃えにくい服が存在します。

燃えやすい服を調べた研究がありましたので、内容をまとめました。

①綿素材やレーヨンなどのセルロース系素材は燃えやすい。
②ただし、綿100%の素材であっても、毛羽立っていないものは燃焼が控えめになる。

③ポリエステル製の服は全体に広がることはなく一部が溶けるようにして燃える。
④お腹側より背中側が燃え広がりやすい。これは、衣服が腹側より背中側の方がゆとりができる作りのせい。
⑤バスローブや、ひじや脇など、空気が多く含まれているものやところはよく燃える。

出典:消防科学研究所報38号・着衣の燃焼性に関する研究https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-gijyutuka/shyohou2/38/38-19.pdf


服にゆとりがあり、空気の層が厚いと燃えやすいことが分かります。

表面フラッシュ現象とは

服を着た状態で火がつくことを着衣着火といいます。そのなかでも、服に一瞬で火が走る現象があります。それが表面フラッシュ現象です。表面フラッシュ現象が起こると、服に一瞬で火が走ります。服に一瞬で火が走る原理はまだ厳密に解明されていませんが、何度も洗濯を繰り返して毛羽だたせてしまった服で起こりやすいことがわかっています。毛羽だった服の表面を火が渡り歩くように広がっていき、あっという間に肩や背中まで火が回ります。

参考文献:服が炎上!? “表面フラッシュ”に注意 | NHK | News Up

表面フラッシュ現象は、ゆとりのある服や毛羽だった服で火を扱うことで起きます。乾燥した時期に火花を散らしただけで燃えることもあり、危険な現象です。

着衣着火の怖さ

日本では、年間に約100人の方が着衣着火の事故にあって亡くなっているといわれています。着衣着火がこんなにも多くの被害をもたらしている理由には、以下があげられます。

①衣服の上に火がついても即座には熱さを感じないため燃えていることに気づかない
②表面フラッシュ現象では一瞬で火が広がるため、対応が難しい
③火が透明なため気づくのに遅れる

服の上の火はなかなか気づけない

服の上で燃えると、熱さを感じません。このことが早期発見に遅れる理由になり、パニックの要因にもなります。服にいつの間にか火がついているのに気づくと、多くの人は慌てて手を振ったり走ったりします。火は酸素があると燃えるため、より大きな火になってしまい被害が広がります。

着衣着火は寒い時期に特に起こりやすいです。寒くなるとフリース素材やニット素材の服を着るようになります。防寒性能の高い服は空気を貯めこみやすい性質があり、より燃えやすくなっています。また、静電気により毛羽たちやすいため、少しの刺激で一気に燃え広がる表面フラッシュ現象が起きやすいです。

アメリカでは着衣着火の法律も

このような理由から、米国や英国では寝具は防炎加工にすることが義務付けられています。特に子供用パジャマには必須とされており、日本に来た人々が防炎加工のないパジャマが普通なことに驚くくらいです。アメリカでは1953 年に可燃性織物法が制定され、その後も幾度と法改正をし規制を行うなど着衣着火に関して十分な注意がなされています。また、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会は、生後9か月から14歳用のすべてのスリープウェアに一定の防炎性能を持たせることが義務付けられています。タイトなデザインにしなければいけないなど、着衣着火はどんな衣服に起こりやすく、どのような被害が生まれるのかを周知させています。

出典:NKSJリスクマネジメント株式会社(平成 23 年 3 月)

一方、日本ではホテルでのカーテンなどには防炎加工にする法的義務がありますが、民間利用での寝具には特に規制が設けられていないため、今後の改定が望まれます。

特に日本は地震が多く、地震の二次災害である火災で亡くなる方が多くいるため、早めの改定が望まれますね。

着衣着火を未然に防ぐ方法

着衣着火は未然に防ぐことがなにより重要です。

調理する時はアームカバーを使う

アームカバーを使って袖口が表に出ないようにするか、腕まくりをしてからアームカバーをして、火を扱うようにしましょう。着衣着火が起きるのはコンロで火を使い袖口に火がつくことがきっかけになることが多いので、アームカバーをするなどして火元に燃えやすいものがつかないようにして予防しましょう。※以下に貼るリンクはアフィリエイトが含まれていますので抵抗がある方はリンクを踏まないでください。


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防炎エプロンを付けてから火を扱う

防炎エプロンをつけて着衣着火すると、火が触れている面は高温になるものの、燃え広がったり燃え続けることを防ぐことが証明されています。手間ではありますが、火を扱う時は防炎エプロンを付けてからにすることを心がけましょう。


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コンロ周りの配置を考える

火をつける瞬間は気を付けていても、作業中になると火への注意が散漫になってしまいます。調味料などがコンロの奥にあるとつい手を伸ばし、火元に触れて燃えることがあります。また、直接火に触れずとも高温になり気が付いたら着火していることもあるため、コンロの奥に何かを置くのはやめるようにしましょう。

大きな鍋を使う時は注意する

大きな鍋など、火の接触面が大きいものは横に広がってきます。小型の鍋であれば火が外に出ても分かりやすいですが、薄く伸びた炎は透明に近いので視覚では分かりづらいです。そのため、大きな鍋だと透明な火が鍋の外側を這って出てくるので気づかぬうちに火にあたりやすく危険です。このことに留意して鍋を使うようにしましょう。

毛羽立った服で火花が散る作業をするのはやめる

毛羽立った服だと少しの火種で火が一気に回ります。特に冬の季節は静電気で毛羽だちやすいです。普段はなんてことない作業でも危ないことがあります。また、古くなったパーカーなど一見毛羽立ってみえない服が着衣着火のきっかけになることがあります。寒い時期では特に着る服に気をつけましょう。

眠い時に火を使う作業はやめる

火災の発生原因はタバコがもっとも多く、また、深夜の時間帯に多く火災が発生しています(参考URL66ページ参照)。データを読み解くと、寝たばこが原因で火災になっていることがうかがえます。着衣の上に火がついてもなかなかすぐには気が付けません。眠い時間帯に火を伴う作業をすることは控えましょう。

引用元:消防白書(令和2年度)

タバコを吸うのなら防炎の寝具にする

それでも夜間にタバコを吸いたい方は万が一に備えて防炎のベッドシーツにするようにしましょう。火災が悪化する原因は、カーテンやベッドシーツなど大きな布製品に引火してしまうことです。寝たばこで火災のきっかけになる場所はベッドであることがほとんどです。消火したつもりでも火種が残っており火災になることもあるので、早めに気づいて火災になるのを防ぐためには防炎のベッドシーツにすることが大事です。


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着衣着火した時の対処


気を付けていても、もし服に火がついてしまったらどうするか。火が付いたときにまず心がけることは、慌てて動き回らないことです。火が一部分ですぐに脱げる状況ならともかく、基本的には脱ぐよりも消火を優先します。なぜなら、脱ぐときに誤って髪の毛や他の部位に着火させ悪化する可能性があるからです。また、服を脱ごうと動き回ると余計に火の勢いを強めることがあるからです。


少し火がついただけの状態なら水をかけることで十分消火が出来ます。しかし、表面フラッシュ現象のときはあっという間に火が広まります。また、服の構造上、火は顔のほうに上がりやすいのでパニックを起こしがちです。そんなときに、焦って手や布などで叩くのは危険。さらに燃え広がる可能性があります。

表面フラッシュ現象が起きたときは、ストップ・ドロップ・アンドロールをおこないましょう。

ストップ・ドロップ・アンドロールとは

大前提として、火がついた時は近くに大量の水があればそれですぐに水をかけます。もしもない時は、ストップ・ドロップ・アンドロールを行います。これは消防でも呼びかけている方法です。

火は、慌てたり走ったりすると余計に悪化するのを常に頭に入れておいてください。あわてず、冷静に対処することが重要です。

ストップ・ドロップ・アンドロールのやり方

①まず、炎の勢いが強くならないようにその場で立ち止まります。

②同時に、顔に火がつかないように両手で顔を覆います。これは目と呼吸器官を守るためです。

③そして地面に真っ直ぐ寝て、左右に転がります。

④何回も繰り返していくと火は消すことができます。

なぜこれで火が消えるのかと言いますと、火は酸素と可燃物と着火源があると燃えるので、転がることで酸素を断ち消火することができるのです。消火したのを確認したら確実に火種が消えるように水をかけます。

火の扱いに気を付ける

火は日常的に使うもので生活に欠かせません。しかし、一歩扱い方を間違えると危険な目にあうものでもあります。火を扱うときは、万が一の対処法を頭に入れておきましょう。

ちなみに火傷をしたときは、無理して衣服を剥がしてはいけません。衣服の上から水を被りましょう。その後、医療機関にかかります。

これからの季節は乾燥します。火の始末に気を付けて生活しましょう。

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